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    読書感想文(第2章)

    引き続き「〈現在〉という謎」の読書感想文です。

     

    第2章 筒井泉

     

    物理学における「空間」の話から始まります。「物理学は19世紀まで英国では自然哲学と呼ばれていた」ということも語られ、素人としては「へえーー」と驚きます。時間という概念については、生物たる我々が生活している状況の変化を認識するために発明されたのではないか、といったことが書いてあり、これは私にとっての時間の実感に非常に近いものです。空間と時間はそもそも別物だが、時空座標という考え方で共通の土台に置くこともできますよ、と紹介しており、これは本書の副題にも含まれている「時間の空間化」を意識して書かれたものでしょう。この後、ミンコフスキー距離(世界間隔)などの数式が出て来ます。理解できません。しかしこの辺りの記述が重要そうです。

    時間や空間はもはや独立なものではなく、互いに入り交じる同質的な意味を帯びる

    相対性理論では絶対的なものは時間と空間のどちらでもなく、それらが結合した4次元的な時空の中の世界間隔であり、それが慣性系に依存しない普遍性を保持している

    そして特殊相対論の基礎には電磁気理論があり、「実験で確認されており、科学的な事実として無視できない」としています。この部分は哲学者に対する念押しのようにも見えます。計量という概念が出て来てさらに数式が続きます。理解できません。とにかく、一般相対論では時間と空間は不可分なものになるということです。感覚的に分からない(人間の感覚できる範囲を超えている)という感じがしてきますが、偉大なるGPS先輩が引き合いに出され、「正しいんですよー」と言って終了。古典力学で粒子をベクトルx(t)で表したように、量子力学では量子状態をψ(t)で表すので大差ありませんという断り。ただし古典力学との違いは、測定を行わない状況であれば線形変換だが測定を行うと状態収縮(state reduction)が起きる点であると説明されます。

    この後、「時間の矢」の話となります。先に、ミンコフスキー距離などで触れたように空間も時間も一緒くたに扱ってゆけるという話がありましたが

    時間軸の方向には、移動の方向と速度が固定されていて自由に移動できない。この「時間の矢」の問題は、古典力学においても、また量子力学においても、基礎方程式の上からその理由を見つけることはできないという意味で非常な難問である。

    と、やはり時間はちょっと特別なパラメーターだよね、という話になります。

    その後、数式が色々出て来ますが、t の代わりに -t を入れても数式が成り立つので時間の矢は順行も逆行もあり得るのでは、といった話になります。これを古典力学と量子力学の両方で、方程式の上で見せてくれるのですが…筆者自身が

    そもそも、このような議論は方程式から環境に問題をシフトさせただけなので、時間の矢の向きの本質的な説明にはならない

    と書いているように、言葉遊びならぬ方程式遊びのように感じました(繰り返しますが私は物理学のド素人です)。遊びのように感じるのは当然ながら私自身が時間の逆行を実生活で経験していないからでしょう。

    次に視点を変えて、エントロピー増大を「時間の矢」問題の突破口にできないか?という論点に移ります。しかし、そもそもエントロピー増大則は統計的処理が可能な、ある程度大きさがあって自由度の高い系で成り立つので、分子数が多い系では時間が順行して分子数が少ない系では逆行するということになってしまうのでは、とのっけから躓きます。さらに、エントロピーが頭打ちになった時、時間も止まってしまうという解釈にならないか、ということでエントロピーと時間を同一視するのは無理筋という感じがしてきます。量子力学で考えると、そもそも測定が行われるとそれだけでフォン・ノイマンエントロピーが増大してしまうし、孤立系と言えなくなるから問題がある、ということが述べられます。

    結局のところ、量子力学においてエントロピー増大則にもとづいて時間の矢を説明する試みは(中略)成功を得ることは現時点では難しいものと思われる。

    こう結論付け、最後に量子力学の時間対称形式が紹介されて終わりです。理解できなかったのですが、理解できるとここが一番面白いところなのではないかという感じはしました。

    全体を通して、見慣れない方程式が多く疲れたのですが「時間の矢」問題は今なお難しい問題だということはよく理解できた気がします。

    ちなみにこれ、ψとφで囲われた玉を連想したのは私だけでしょうか。

     

     

    第2章コメント 小山虎

     

    「逆行」という言葉を明確にした方が良いのでは、という指摘が入ります。なるほど確かに、と感じます。エントロピー増大を時間の順行と言ってしまうと、エントロピーが増大してから減少した場合は時間が順行して逆行したって言えるの?とツッコミが入ります。さらに鋭く、「そもそもエントロピーが減少したのを逆行と呼んだとしても、エントロピーの減少を測定している人にとっての時間は順行したままでしょう」とツッコミが入ります。なるほど、議論になっている!と思いました。

    次に、時間対称形式における逆行について、「因果関係」という視点を入れるといいのでは、と絡んでいきます。哲学の世界では因果という考えによって時間の矢を説明しようとしてきた、という歴史的背景に触れながら、量子力学の発展が哲学に対しても新しい観点を提供してくれますね、と前向きな感じになって終わりです。

    とても有意義な議論だったのではと感じました。小山先生の話にも突飛なものは感じず、ちゃんとキャッチボールが成立していたように見えました。

     

     

    第2章リプライ 筒井泉

    ツッコミごもっともですね、という感じで始まります。

    量子力学の時間対称形式における時間の順行、逆行の問題は研究者間においても論争が継続中であって筆者もこれに関与しているが、いまだ結論が得られる段階でなく(後略)

    ということで、むしろ私としては「白黒付いていない最先端の議論を紹介してくれてありがとう筒井先生」となりました。でも時間対称形式ほんとうによくわからなかったので悔しい限りです。

    次に、因果について、これは時間の矢を定めるものというより時間の矢が暗黙の了解として組み込まれた上での話なのでは、と疑問を呈しつつ物理学的に因果関係について説明していきます。光子源と検出器と分配器を組み合わせた実験を紹介し、量子力学においては因果関係というものも(我々がマクロの世界で自明なもののように思っているほどには)確かではない、ということが紹介されます(こういう理解でいいのか少し自信がありません)。

     

    第2章はお互いの立場を尊重し合うような交流が見られ、非常に良い読後感でした。

     

    読み進めるのはだいぶ骨が折れるのですが、お楽しみの第4章が待っているので第3章も読んでいくことにします。

     

    | tec0(てこ) | 現在という謎 | 19:45 | comments(0) | trackbacks(0) | - |









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