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    読書感想文(第4章)

    さて第4章です。

     

    第4章 青山拓央

    まずこの章は2005年に哲学研究者向けに出版されたものを読みやすく手直ししたもの、ということです。読んでいきましょう。

    心と身体との相関関係――とりわけ心と脳のあいだの――を見るとき、ある心的な(mental)出来事とある物的な(physical)出来事との同時性は、重要な意味をもつように思われる。だが、そのような同時性の承認はいかにして為されるのだろうか。また、現象的経験(主観的な意識における経験)が「現在」という時を捉えているとするなら、その「現在」は私と他者のあいだで共有されているのだろうか。

    と、2つの問題提起をします。前者に関してはあまりピンと来ません。日常生活では我々は肉眼で見える範囲のものを見ているわけですから、物的な出来事が起きると同時に「起きた」と感じるからです。後者については、自分と近い距離にいれば現在という感覚も共有できるんじゃないのかな?程度に感じました。

    この後、おもむろに「心身二元論ならこの2つの問いに明快に答えられる」と展開していきます。ただし

    意識と身体の二元論は私にとっても疑わしく、それを擁護すること自体が本章を書いた狙いではない。

    こうも書いているので青山先生は心身二元論支持者ではないようです。

    「遅れ」の懐疑、と題して、何かの出来事が起きてそれが脳内に変化をもたらすまで時間がかかる、ということを書いています。そして

    天敵に出会った1万年後に恐怖の意識が生じることは、十分に想像可能である。たとえ、出会ってすぐに動悸が高まり、叫び声を上げ、駆け足で逃げ出したような場合でさえ、そうした物理的反応ではなくそれに対応する恐怖の意識が1万年後に生じることはありうる。

    こう書いています。流石にこれは暴論というもので、「叫び声を上げている時点でもう恐怖を生じているのでは……」というのが感想です。神経伝達の速度が異常に遅くて1万年後に恐怖を生ずるような生物を想像した場合、これが逃げ出すのも1万年後だろうなと思います。

    同一性と同時性、と題した部分は難解です。

    しかし、物理主義的な観点から、因果の物理的閉鎖性を厳密に支持するなら(中略)意識から物質へと向かう因果作用だけではなく、物質から意識へと向かう因果作用もまた不可能となるはずだ。

    なるはずだ、と書いていますがこれがまず分かりません。この「物質」とは脳のことと読んでいいと思いますが、むしろ物理主義的観点に立つなら脳と意識は不可分という考えに至るのではないでしょうか。意識というのは脳の機能の表れの一つであるからです。

    この後、物質を大地とし、意識を凧とする比喩が登場します。そして「糸の長さをゼロにする試みは容易ではない」といったことを述べているのですが「いやゼロだろ」というのが正直なところです。そもそもこの比喩があまり適当でないと感じます。注釈でも青山先生自身「この比喩はかえって理解しにくいかも…」といったことを書いていますがその通りだと思います。私の感覚で言うと物質(脳)をオーケストラとし、奏でられる音楽が意識、というのが意識の理解に近いものです。糸に当たるものは特に想定しなくて良いと思います。

    しかしこういった私のような考えは「随伴現象説」と哲学では呼ばれているようです。「意識と物質との時間的距離をゼロとみなすのは、信念の表明であって説明ではない」とも述べていますが、脳内での神経伝達の速度を考えるとほぼゼロと言っていいのではないでしょうか。これが、糸を想定しなくていい理由です。

    この後、「スーパーヴィーン」という考え方が出て来ます。

    性質の集合 A が性質の集合 B にスーパービーン[(スーパーヴィーン)]するのは、次のときであり次のときにかぎる。必然的に、任意の[個体]x と[個体]y について、もし x と y が B に属する性質のいずれによっても区別されないならば、x と y は A に属する性質のいずれによっても区別されない。

    心的状態は脳状態にスーパーヴィーンするが、その逆のスーパーヴィーニエンスは要求されない。かみ砕いていえば、ある脳状態が成立するときいかなる心的状態が成立するかは決まっているが、ある心的状態が成立するときいかなる脳状態が成立するかは決まっていない(後略)

    これを読んで、率直に言って「哲学者が話すことではないなぁ」と思いました。哲学より心理学とか神経生理学とか脳外科学寄りの話かなと思います。別に、哲学者が話していけないテーマなんてものは無いと思いますが、他に適役がいるのではという感覚です。

    引用した部分について、こういうことは言えると思います。例えば生きているヒトを捕まえてきていきなり脳にドリルを刺して脳を十分に破壊したとしましょう(死なないように脳幹だけ残して手早くやります)。もう一人捕まえてきて同じように脳を破壊します。この時、どちらも心的状態としては「無い」「意識も無いし心的状態が存在していない」と言えるでしょう。これはある脳状態が成立していてそれによって心的状態が決定している例です。

    さて、2人のヒトを連れて来て「殺す」と脅しながらナイフを突きつけます。2人にはおおまかに言って「恐怖」と呼ばれる心的状態が成立しているでしょう。この時、ミクロでの2人の脳の構造は違うわけです。これを持ってして「いかなる脳状態が成立するかは決まっていない」とは言えるかも知れません。しかし扁桃体はある程度活発に活動しているだろう、ということは推測できます。これを持ってして「ある程度脳状態が決まっている」と言うこともできるわけです。

    青山先生によれば、引用した部分は「有力な説明」ということらしいのですが、いったい引用した部分が有力かどうか、誰がどのようなプロセスを経て判断しているのかは謎です。他者の現在、と題した部分でもやはり意識が生じる時間差のようなことを語っていて、ピンと来ません。現実離れし過ぎていると言うか……。ヒトを想定して話を展開するのであればヒトの限界から逸脱しないように話す必要が有るのではないかと思います。

    補遺の部分は現在主義にも触れているのですが、少し言葉遊びの感が強くて空転している感じです。

    「私」の意識のない世界が現在であることがありえないのなら、「私」の誕生前や死後の世界が現在であることもありえないが、現在であることが不可能な時間がどうして「時間」なのだろうか。

    こんな具合で、ちょっと空転の度合いがひどいかなと……。

    高く評価すべき点も有ります。それは青山先生が東プレの Realforce 91 を使用しているという点です。Realforce は静電容量無接点方式を採用した、打鍵感の素晴らしい逸品であり私を含め多くのゲーマーが使用しています。テンキーレスモデルというのも渋い。

     

    第4章コメント 谷村省吾

     

    「対応」という言葉は何を意味しているのか? 「最終的」とはなにを意味しているのか?(中略)では意識状態の定義はなになのか? なにのどのような状態のことを意識状態と呼んでいるのか? 私が「痛い」と感じるその質感のことなのか?

    序盤から質問責めです。まあ仕方無いことでしょう。谷村先生は非常に常識的な解釈、つまり、「痛み」などの感覚は脳の物理状態によって生ずるものですよね、ということをあの手この手で伝えようとしています。「1万年後の恐怖」の話についても「文章としては成立しているけれど実際の実現可能性は無いよね」ということを書いています。全く同感です。

    (前略)私自身は、心と身体(物質)は、階層の異なる概念だと思っている。心的な出来事は、物的な出来事を組み立てた高次の概念であるとでもいえばよいだろうか。(中略)階層の異なる概念を一元にまとめようとしたり、対等の二元として並列させたりするのは、ものごとの適切な捉え方ではない。

    これもその通りだと思います。性質が異なるものであるし、脳が前提となって心が存在するので、切り離して考えたり対置したりはできないものだと思います。大地と凧の比喩にもこの観点からツッコミが入ります。スーパーヴィーニエンスについては流石物理学者らしく、きれいに数式にして表現し直しています。丁寧に引用を交えながら青山先生に批判を加えていく展開が続きますが、総括として「哲学者は取り残されてもよいのか」と題した節を書いています。非常に建設的で良い文章です。特に良い部分を紹介します。

    むしろ私が哲学者に期待するのは、新しい物理学や新しいテクノロジーが垣間見せてくれる世界を適切に捉える新しい言語や概念体系を作ってくれることである。いまの哲学者がやっていることは、その真逆で、宇宙のことも原子のことも知らなかった人間の言語の範囲で無理やり世界を解釈しようとしているように見える。

    新しい知見をちゃんと前提として、その上で物理学者にできないことを哲学者にやって欲しい、という極めて真っ当な主張だと思います。哲学者がこの現代で何をやるべきか、これは私には実のところよく分かりません。しかし荒唐無稽な空想を繰り広げるよりは、もう少しやるべきことが有るのではないか、とは思います。

     

    第4章リプライ 青山拓央

     

    冒頭から「意識」という言葉について語ります。谷村先生が書く「意識」は「心理的機能」のことであり、自分の書いた「意識」は「主観的で現象的ないわゆるクオリアに関わる狭義の意識」である、として、批判を「かみ合わないものとなっている。」と退けます。これには読者の私も肩透かしを食らった気分です。クオリアに関わる意識、というものも結局は脳の機能の表れであるわけですから特に谷村先生の批判が噛み合っていないとは私は思いませんでした。その後

    谷村氏はコメントのなかで、「「[……]細胞内のすべての分子・原子・電子たちが物理的・化学的にまったく同一の状態であり、ただ意識状態だけが異なっているということがありうる」というふうに青山氏の文章を読むべきなのか?」と書かれているが、拙論での分析において、その答えはイエスである。

    こう書いているわけですが、これが YES であるなら、意識は脳によって作り出されたもの、という大前提を否定することになると私は思います。一気にオカルトじみてきたなぁ……という感じです。その後、クオリアとか現在主義の話が展開されていくわけですが「〈現在〉についての日常的直観を吟味することは重要だ」なんて書いていて、いやそれって谷村先生が既に「人間の言葉の範囲で無理やり世界を解釈しようとしている」行為じゃないの……と思ったり、まああまり得るものが無いなぁという印象でした。

     

     

    少し前にこんなツイートをしたのですが、このツイートでの意識は「クオリアに関わる狭義の意識」ではありません。でもまあ何であれ脳の機能の表れの一部だよねって意味では別に私のツイートも外していないかなと思います。私が考える意識の専門家というのは基礎レベルでは心理学者や神経生理学者、臨床レベルでは脳外科医や精神科医です。青山先生はそういう人達とも話をしてみるといいのではないかなぁと思いました。

     

    | tec0(てこ) | 現在という謎 | 21:06 | comments(2) | - | - |
     こんにちは、谷村省吾と申します。突然のコメントで失礼いたします。『〈現在〉という謎』の一章一章を丁寧に読まれて一章ごとに感想文を書かれていることに感激しました。本書の著者の一人として光栄に感じていることをまずお伝えいたします。

     今回は、第4章 客観的現在と心身相関の同時性(青山拓央氏と谷村省吾の討論パート)についての tec0さんの感想文を読ませていただきました。本の著者の一人が読者にコメントを求めるのは、また、本全体を読了されないうちに干渉するのは、不適切かもしれませんが、この本が専門外の読者の方にどう思われているか、また、哲学者の論説に関して私の見落としはないかということを、私は知りたいし、本の内容を忘れないうちにお尋ねした方が正確にお答えできるだろうと思いますので、お尋ねします。

     青山拓央氏の文章を私が読んで一番わからなかったことは、「結局、青山氏は何を一番言いたかったのか?」ということです。青山氏は、心身二元論はいまどきあり得ないという意味のことを述べておいて、やっぱり心身二元論は優れているみたいなことを述べています。スーパーヴィーニエンスという(時間とは無関係な)概念や、「物質と意識は大地と凧」というたとえ話を導入してはいますが、結局、これらも時間の問題の解決の助けにならないとして見送っています。青山氏の文章中には結論らしきものが見当たりません。結論でなくてもよいから、「私はこれを言いたい、これを信じている」というメインの主張すらはっきりしません。「謎かけ」で終わっている気がします。以上は私の感想です。

     そこで tec0さんの見解をお尋ねします。青山拓央氏が書かれたパートで、主たる主張らしく読める部分があったら、教えていただきたいと存じます。また、青山拓央氏のパートを読んだことにより、読む前よりも理解できたことがあれば、教えていただきたいと存じます。

     私はいかなる意味においても tec0さんに文句を言いたいわけではありませんし、tec0さんの意見を誘導したいわけでもありません。当然のことながら、本に対してどのような感想を抱くことも読者の自由です。そのように私は考えています。
       谷村省吾
    | 谷村省吾 | 2020/01/09 4:59 PM |
    すみません、コメント頂いたことに今気付きました…。エントリーで返信致します。
    | tec0 | 2020/02/01 9:37 AM |









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